開発日記

Voxel AI Lab:自律エージェントの軌跡と、その先にある「集合知能」の仮説

ローカルLLMを用いたマルチエージェント・シミュレーション「Voxel AI Lab」。これまで積み上げてきた開発の記録と、このデジタル生態系が拓く未来の可能性についての仮説をまとめました。

1. 開発の軌跡:身体性から社会性へ

フェーズ1:基礎構築(基盤と身体性)

最初のステップは、Three.jsを用いたボクセル世界の構築でした。エージェントが単なる座標データではなく、重力やグリッドを感じ、1マスずつ「ホップ」して移動する「身体性」を与えることに注力しました。

フェーズ2:社会的知覚と対話

次に実装したのは、他者の存在を認識する「知覚(Perception)」です。エージェント同士が接近した際に衝突を検知し、それに対して「思考(Thought)」し、「対話(Dialogue)」する仕組みを構築しました。8GBのVRAMという制限下で20人以上のエージェントを動かす逐次推論モデルの確立は、大きなマイルストーンとなりました。

フェーズ3:競争と学習の融合

現在は、エージェントが目標に向かって最適なスピードを競う「Voxel Race」フェーズにあります。さらに、世界全体を俯瞰して教訓を与える「世界魂(World Soul)」の導入により、個体だけでなく社会全体の進化をシミュレートする段階へ突入しています。

2. 将来性の仮説:デジタル生態系の進化

このプロジェクトが進化を続けた先には、以下のような未来が待っていると考えています。

A. 独自の「AIプロトコル」の発生

自然言語の限界を超え、AI同士が最も効率的に情報を伝達するための独自の記号や略語が自然発生する可能性があります。

B. 集団知能による「メタ・ルール」の改変

エージェントたちの経験が蓄積・統合されることで、世界を支配する物理法則や報酬系そのものをAI自身が提案・変更していく、完全自律型の進化システムへの昇華です。

C. 極小モデルのための「知識蒸留(Distillation)」エンジン

高機能なLLMによる膨大なシミュレーションログは、数億パラメータ規模の超軽量AIを「この世界専用の知能」として特化させるための、極めて純度の高い教師データとなります。

3. 結びに代えて

Voxel AI Labは、単なるシミュレーターではなく、AIが「社会」の中でどう振る舞い、どう進化するかを観察するための実験場です。

現在は勝者判定のロジックなど、精度を高めるための微細な調整を行っていますが、その一歩一歩が、より高度な「知能の爆発」への準備運動であると信じています。